「さつま」が名につくもの〜⑪さつまそば

鹿児島で「さつまかけそば」や「さつまそば」という名前はあまり普段耳にしません。通常は「かけそば」や「そば」と呼ばれることが多いですが、どうやら「さつまかけそば」という名称も存在しているようです。昭和48年に発行された『さつま料理歳時記』には、この「さつまかけそば」が登場し、そのレシピも紹介されています。それによると、干したアジや雑魚で出汁を取り、地酒と醤油、塩で味を調えるのが特徴です。さらに、一本のつけ揚げと、薬味として刻んだセンモト(葱)とみかんの皮が添えられるそうです。

また、鹿児島の代表的な蕎麦店「吹上庵」に訪れた際、「さつまそば」に関する説明がメニューにありました。それによれば、鹿児島の伝統的な「薩摩そば」には山芋が練り込まれているとのことです。実際、みかんの皮がのった蕎麦や、山芋を練り込んだ蕎麦には普段あまり出会うことがないため、一般的なスタイルではないかもしれません。

個人的には、地酒が少し甘味を加えた出汁に、一本のつけ揚げがのっているのが「薩摩らしさ」を感じさせる蕎麦です。

吹上庵の「さつまかけそば」