温州みかんと聞いて、思い浮かぶのはどんな光景ですか?
冬の日、こたつで丸くなって、温州みかんの皮をむきながら家族と過ごす夜。温かいみかんの香りと、甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がる幸せなひととき。そんな冬の果物の代名詞とも言える温州みかんですが、実は海外では意外な名前で呼ばれているんです。それが「Satsuma」。
この名前の由来は、江戸時代の終わりにさかのぼります。ドイツ人医師シーボルトが長島で見つけたみかんを「Nagashima」と名付けたのが始まり。後に、明治時代にアメリカ駐日弁理公使のヴァン・ヴァルケンバーグが鹿児島長島産のみかんの苗木をフロリダに持ち帰り、彼の夫人が「Satsuma」と名付けたと言われています。(*そのほかにも諸説あるようです)
また、アメリカには、「Satsuma」という地名が四箇所もあります。これも、温州みかんの生産地だからなんでしょうね。
私が初めて、温州みかんが西洋では「Satsuma」と呼ばれていると知ったのは、トルーマン・カポーティの小説「クリスマスの思い出」の一節からです。
We sprawled on the grass and peeled Satsumas and watched our kites cavort.
最初に読んだ時、「さつま芋」のことだと思いましたが、皮を剥いて食べるってなんか変だなぁと。よく調べてみると、それが温州みかんのことだとわかって、びっくりしました。でも同時に、なんだかとても嬉しくなりました。
カポーティの「クリスマスの思い出」は、とても可愛らしくて少し切ない感じもするけど、読むと心が温かくなる大好きな小説です。冬の日の素敵な情景が目の前に広がるこの物語に「Satsuma」が登場することに、本当に嬉しく思います。
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