サツマハオリムシは非常にユニークな生き物です。口も胃も持たず、餌を食べることがありません。では、どうやって生きているのか?その秘密は体内にいる細菌にあります。これらの細菌が水中の硫化水素イオンを栄養素に変え、その結果としてサツマハオリムシは生きることができるのです。硫化水素といえば、卵の腐ったような臭いのする強い毒性の物質ですが、それを栄養素に変えるなんて本当に驚きです。このような生き物は、化学合成共生生物と呼ばれます。
通常、ハオリムシの仲間は深海に生息していますが、サツマハオリムシは水深100メートル前後という浅い場所に生息しています。その理由は、錦江湾の火山活動によって深海に蓄積されたメタンに含まれる硫化水素イオンが、火山ガスによって浅瀬まで運ばれるためです。このため、サツマハオリムシは世界でもっとも浅い場所に生息するハオリムシとして知られています。
見た目は地味であまり可愛らしいとは言えないかもしれませんが、錦江湾の火山活動と共に生きるこの生き物には、とても興味深い一面があります。