「さつま」が名につくもの〜③薩摩塔

 薩摩塔は九州にしか存在が確認されていない、謎の多い石塔です。

 薩摩塔は、鹿児島、長崎、佐賀、福岡の西側でしか発見されておらず、完成形もほとんど残っていないようです。発見された地域が九州の西側に集中しているのも興味深い点です。壺型の塔身には、桃のような形でくり抜かれた部分があり、そこには柔和な表情のお釈迦様が座っています。その下の六角形の部分には、雲に乗った中国風の像が四体彫られています。

  近年の調査で、この石材が中国寧波産の石材「梅園石」である可能性が高いことが判明しました。なぜ、中国で作られた重い石塔を船で運んできたのでしょうか?誰が、何のために作ったものなのか、未だ明らかになっていないようです。坊津や平戸といった九州西側の港町で多く発見されていることもロマンを感じます。

 私が初めて薩摩塔のことを知ったのは、15年ほど前に鹿児島大学で開かれた公開講座でした。その後、川辺の水元神社で実物を見たとき、他の古寺にあるような日本風の仏塔とは明らかに雰囲気が違うことにちょっと感動したことを覚えています。個人的には、桃型にくり抜いた部分が、可愛らしくて気に入っています。宗教的な信仰の対象として作られたのでしょうが、商業的な縁起物?恵比寿様とか大黒様みたいな思いを込めて、当時、海上の道を渡ってやってきた中国の商売人が設置したような印象を受けます。なんの根拠もありませんが、ただ、不思議と惹かれます。

 薩摩塔という名称は、その名の通り、最初に発見されたのが薩摩だったことに由来します。正確な年代は分かりませんが、昭和30年代のようです。それ以来、多くのことが謎のまま解明されていません。制作された意図や人物を裏付ける重要な新資料が今後出てくることを期待しています。