「さつま」が名前につくもの〜⑤サツマハオリムシ

サツマハオリムシは変な生き物だ。口も胃もないから餌を食べることもない。

どうやって生きているかというと、体内にいる細菌が水中の硫化水素イオンを栄養素に変えることで生きている。硫化水素というのは、いわゆる卵の腐ったような匂いのする毒性の強いものだ。それを栄養素に変えて生きているなんて不思議な生き物だ。こういう生き物を、化学合成共生生物というそうだ。

通常ハオリムシの仲間は、深海付近に生息しているが、サツマハオリムシは水深100M前後の浅いところにいる。錦江湾の火山活動で深海深くに蓄積されたメタンに含まれる硫化水素イオンが、火山ガスによってサツマハオリムシがくらしているところまで上がってくるためである。そのためサツマハオリムシは世界でもっとも浅い場所に生息している。

サツマハオリムシ、見た目はあまりかわいいとは言えないし、かなり地味な奴だが、錦江湾の火山活動とともにくらす面白い生きものだ。

まだ実物を見たことがないので、はやく鹿児島水族館に行って本物のサツマハオリムシを見てみたい。